中東の噴火口 2018 10 8

 先日、エミン・ユルマズ氏の著作で、
「世界は新冷戦へ突入 それでも強い日本経済」という本を紹介しましたが、
興味深いところを引用しましょう。
 2018年4月21日に発生したリヤドの王宮での銃撃事件以来、
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、
メディアや公の前に姿を見せなくなったことから、
同皇太子の消息に関する「さまざまな憶測」が飛び交った。
 一部のメディアは、
サウジの王子たちの一部がクーデターを起こし、
ムハンマド皇太子の暗殺を計画している可能性があると報じていた。
(引用、以上)
 これは、日本において「大ニュース」になってもおかしくなったのですが、
なぜか、ほとんど報道されず、
「王宮付近に飛んでいたドローンを警備兵が撃ち落とした」と、
国際面で小さく報道されたぐらいでしょうか。
 日本のメディアは、
「皇太子が親日である」とか、
「皇太子は、日本文化が好きで、日本のアニメのファンだ」など、
あまり重大でないニュースをさんざん報道したのに、
王宮銃撃事件には、ほとんど反応しなかったかもしれません。
 日本は、サウジアラビアから、
大量に原油を輸入しているので、対岸の火事ではありません。
 皇太子は、高齢の国王に代わって、
実質的に国政を担っていると言われています。
 多くの評論家が指摘するように、
皇太子の「現実的な政策」が、身の危険を招いているかもしれません。
皇太子は、「イスラエルが存在する権利を認める」ような趣旨の発言をしています。
(これは、国際政治学者の六辻氏の評論が詳しいでしょう)
 このような外交政策は、「アラブの大義に反する」と、
政治家どころか、一般大衆まで思うところでしょう。
 アラブ諸国とイスラエルの対立は、
何度も繰り返された「中東戦争」が典型的です。
 しかし、政治的に考えれば、
サウジアラビアとイスラエルの接近は、現実的です。
 サウジアラビアは、ペルシャ湾をはさんでイランと対立しています。
イランは、イスラエルの存在を認めないと考えていて、
かつて、同国の大統領が「イスラエルを世界地図から消し去るべきだ」と発言しています。
 「共通の敵」という考え方を取れば、
宗教を超えて、サウジアラビアとイスラエルの接近は、現実的です。
 しかし、「宗教を超えていいのか」というのが、
アラブ諸国どころかイスラム諸国における一般大衆の思いでしょう。
 もうひとつ、よく言われるのが、
サウジアラビアがイエメン紛争に介入して、長期化を招いていることです。
日本でも、イエメン紛争が泥沼化していると、断片的なニュースが流れます。
これは、アメリカがベトナムに介入して、泥沼化したことを連想させます。
 アメリカにとって、ベトナム戦争が財政的な負担になりましたが、
サウジアラビアにとっても、財政的な負担でしょうか。
 もちろん、イランにとっても、
イエメン紛争やシリア紛争が、財政的な負担であり、
生活が苦しいイラン人にとっては、大きな不満でしょう。
(イランは、イエメンにもシリアにも介入しています)
 最近の原油高は、サウジアラビアにとっても、
イランにとっても、「恵みの雨」となったでしょう。
 イスラエルの取るべき政策は、
イスラム諸国に「体力消耗」させる政策を取るでしょう。
 ところで、こちらは、日本でも「大ニュース」になったのが、
2017年の秋、皇太子をトップとする「汚職対策委員会」が、
現職の閣僚を含む大勢の王族や有力者を、
汚職や横領の容疑で一斉に拘束して、
複数の王子も、その対象となったというニュースがありました。
 日本のメディアでは、王族たちが、
豪華なホテルに拘束されているという部分だけが「大ニュース」となりました。
 私は、このニュースは、アメリカに波及しないのかと気になりました。
一部の評論家からは、大富豪の王族たちが長年にわたり、
アメリカの政治家たちに献金しているので、
アメリカに波及しないのかと指摘する人がいました。
 アメリカでは、外国から政治献金を受け取るのは違法でしょうが、
迂回する方法は、いくらでもあるでしょう。
 もちろん、「汚職対策委員会」の摘発は、
トランプ政権の了解のもとで行われたと推定されるので、
大事に至らなかったと思われます。
 中東が大噴火を起こせば、日本は大きな被害を受けるでしょう。
日本は、中東から大量に原油を輸入しているからです。
 もちろん、中国も大きな被害を受けるでしょう。
中国の命運は、中東に左右されるかもしれません。
 インドも、中国と同じような状況ですが、
インド人は、中国人と違って、質素な生活をしていますので、
エネルギーの大量消費はないでしょう。
 「シェール革命」によって、
世界最大の産油国になったアメリカから、原油を輸入しますか?
 アメリカが原油を輸出するかどうかは、
トランプ大統領への「忠誠度」で決まるのでしょうか。






























































































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